(1)単組ストと連帯スト

 ここまでは、主として「単組スト」について説明してきました。単組ストは主に経済要求(賃上げや一時金)など、職場内の諸問題を解決するために単組の判断で上部団体と相談して行うものです。

 

 一方、「連帯スト」は、上部団体(全労連など)地域労連の提起を受けて、職場外の関連産業や政治・社会の諸問題の解決、働く仲間の争議支援、他の単組のスト支援などのために連帯して行うストライキです。

 

 

 

(2)団結の大切さ

 多数の人が力を合わせてまとまることを「団結」と言います。 

 ストライキで何より大切なのは、この「団結」です。みんなで意思統一したストライキなのに、抜け駆けした仕事をしたり、遊びに行ってしまったりする人がいれば、会社に対する圧力にもなりませんし、労働者が自発的な意思で集まる労働組合と言う組織自体が成り立たなくなってしまいます。 

 

逆にいえば、「団結」するといことが、労働組合にとって最も大きな力です。それは、一企業の労働組合活動やストライキで重要なのはもちろんですが、企業を超えて複数の企業で働く労働者が団結し、さらには産業も超えて全国の労働者が団結すれば、もっと大きな力を発揮できるといえます。 

 

 ストライキは、企業内の労使交渉が行き詰った時の最後の手段として決行するだけではありません。産業や社会全体で問題になる、労働者の切実な要求を実現するために、大きな規模で行う「連帯スト」もあるのです。連帯ストは、「業務をストップさせて会社を困らせる」ということが主な目的ではない点で、単組ストとはいくらか質が異なります。

 

 

 

(3)広い視野を持って、労働条件を考えよう

 たとえば、ある会社で非常に低い賃金の回答が出されたり、理由もなく不当に解雇されて争議が起きたりするとします。そのような場合、仲間を支援するために「連帯ストライキ」を行って一緒に闘っていくことがあります。では、一見自分とは関係のないような他社の人たちのために、なぜ一緒にストライキまでする必要があるのでしょうか。

 

 労働条件というものは一企業の経営状況や経営施策だけで決まるものではありません。賃金の世間相場や、労働力の需要と供給のバランスというものも、労働条件を決める大きな要素です。ですから、自分の企業だけでなく社会全体を見て、だれにでも生活していけるだけの賃金を保障させるようにしていかなければ、全体の労働力が値崩れを起こしてしまいます。法律の上では、いくつも「労働者にはこれこれの権利がある」ということが定められています。しかし、実際にその権利を保障させ、権利を使えるかどうかは、職場の労働組合にかかっています。「自分の会社では、ちゃんと権利が保障されているから大丈夫」と思っていても、多くの会社で法律が守られていない状況が広がれば、それを横目で見ている経営者から、同じように権利の切り下げを受けることがおおいにありえます。

 

 労働者全体にかかわる労働条件や権利については、他の人の身に降りかかったことでもわが身のことととらえ、たとえ自分の賃金カットされようともストライキをして、労働者の本質的なことを守っていく必要があるのです。

 

 もう少し大きな目で見てみましょう。例えば国会で労働者の権利を奪うような法律の改悪があるとします。あるいは、税金が、金持ちを優遇して低所得層にだけ負担を増やすような制度に変えられそうになっているとします。

 

 こういう政治的なことも、広い意味の「労働条件」に関係する重要なことです。そして、このような社会や政治にかかわる問題こそ、一企業の労働者だけの力では足りません。もっともっと多くの仲間と団結して、働く者にとっての負担増を阻止し、よりよい社会条件をつくっていかなければ、生活や労働は苦しくなっていってしまいます。労働者に共通して影響を及ぼす重要な問題には、やはりストライキで立ち向かっていく必要があるのです。

 

 

 

(4)連帯(統一)ストライキを成功させるために

 ストライキをする以上、賃金カットは覚悟しなければなりません。その分を、組合費やカンパで補てんすることになると、財政面での問題も持ち上がるかもしれません。また、経営者からは、「内と関係がないことで、なんでうちの業務を止めるのか」といった話がくる可能性もあります。連帯(統一)ストで運動をするためには、一企業内のスト以上に、さまざまな面でハードルが高くなります。

 連帯(統一)ストを成功させる一番の秘訣は、「なぜ、(この問題で)連帯して行動しなければいけないか」ということを、学んで理解することです。どれほど自分たちに大切なことであるかが分かれば、参加する意欲もわいていきますし、指名ストで代表して参加する人をみんなで支援することもできます。

 

 そして経営者に対しても、単にストライキを通告するだけでなく、なぜ労働組合はこの問題を重視し、ストを打ってまで行動する必要があると考えているのか、説明すべきでしょう。労働者と経営者とは立場が違うので、すべてを理解させることは難しいかもしれません。しかし、一定の問題意識の共有は可能ですし、経営者に対する説得の作業を経ること自体が、労働組合としてストライキの意義を確かめる上で、力になります。

 

 

 

 

(5)連帯スト件の確立と行使

 一単組を超えたストライキを行う為には、前にのべたように、連帯ストライキ権を確立する必要があります。全印総連では、地連ごとに大会における無記名投票で確立することになります。連帯ストライキ件はが大会で確立されたら、さらに単組ごとにストライキ権の批准投票を行って確認します。ストライキ権の行使は、本部からの指令に従い、必要があればすぐにストライキに入れるように準備をしておきます。

なお、もちろん、社会的な要求のためのストライキ権を、単組ごとに確立して行使することもできます。

 

 統一ストでは、上部団体の指令に基づいて、社前集会、屋内集会、デモ行進などが行われます。また、官公庁や政党に要請や請願に行くこともあります。さらに国の根本にかかわるような重大な問題については、「ゼネスト」を行う例もあります。「ゼネスト」とは、「ゼネラル・ストライキ(General Strike)」の略で、産業を超えていっせいにストライキを行い、社会機能全体をストップさせてしまうという行動です。