主権者を騙した票こそ『死票』ではないか_第160回配信  2013年3月25日

         「死票」ということばがあります。選挙で候補者が得た得

        票のうち、当選しなかった人たちに投票された票のことを意

        味しています。マスコミではこの「死票」ということばを、

        こういう意味でごく普通に使われています。

         しかし、このことばは民主義の立場から考えると違和感を

        覚えます。選挙の時期になると「そんな候補者に入れても死

        票になるだけだよ」という会話をかなり聞くことも事実です。

        これでは民主主義を否定することにつながりませんか。賭け

        事のように「勝ち当てること」が民主主義ではないはずです。

         一方で、主権者をあざむく「公約」が横行しています。最

        近の例でいえば、TPP反対をかかげ「守るべきものは守る」

        と公約した自民党でしょう。マスコミに振り回されずに事態

        を見ていけば、すでに公約は破られています。

         このように、ウソで主権者を騙した票こそ「殺された票」

        であり、『死票』と呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

         「死票」ということばには、意図的に票を大政党に誘導す

        るねらいがひそんでいます。「死票」を生みやすい小選挙区

        という選挙制度は、民主主義の視点から問い直されるべきで

        す。同時に、人を選ぶ選挙から、政策を見抜いて政党を選ぶ

        選挙へと、意識をかえていく主権者自身の運動が必要です。

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大震災から2年_ながい道のり原発廃炉も復興も

                 石巻フォークキャラバン 飯田利通さん

         早いもので、3月には津波で犠牲になった母の三回忌迎え

        ました。

         今年の2月の時点で発表された震災犠牲者の数は、石巻・

        東松島・女川の2市1町で4745人、行方不明者は736

        人。うち石巻は犠牲者3256人、行方不明者447人。

         私のように、1年もたたぬ内に自宅に戻れた被災者はつく

        づく幸せだなあ、と思います。

         未だに仮設暮らしで、商売やくらしの先行きが不透明な方

        々、ましてや身内が未だ行方不明という方々の胸中を思うと、

        胸が痛むばかりです。

         津波対策については、海岸の堤防をつくるのは国、高盛土

        道路は県、避難路は市とそれぞれ担当が決まっているそうで

        す。

         しかし、県や市の担当する区域はほとんど住宅地なので、

        かなりの数の土地買収をしなければならず、工事の完成は至

        難とも思えます。国からの支援がなければ手も足も出ないの

        ではないでしょうか。そのうえ、国の担当で土地の買収が必

        要ないはずの海岸堤防の工事さえ、未だに始まっていないこ

        とを考えると、「一体いつになったら津波への恐怖心から逃れ

        られるのか・・・」。

         たびたび余震があり、脅かされる毎日ですが、個人ででき

        る範囲の震災・津波に備えた対応や心構えを整えたうえで、

        あとは腹をくくるしかありません。

        (川柳)        飯田駄骨

          ながい道のり原発廃炉も復興も

          回想の母はこころの海だった

          花一輪更地に残るものがたり

  この原稿は、機関紙協会宮城支部の機関紙「みんながデスク」3月25日付

から、編集部の了解を得て配信しています。

 

 


 

TPPから いのちとくらしを守れ_川崎医療生活協同組合機関紙「川崎医療生協」

TPPってなに

         TPPとは「環太平洋連携協定」の略称で、日本がこの協

        定交渉への参加をめぐり大問題になっています。

         世界各国では、輸入品に関税をかけることで、国内産業を

        保護しています。TPPへの参加は農産物を含め、すべての

        物品(モノ)の関税を例外なく撤廃し、自由に貿易ができる

        ことになります。

         モノ以外の貿易にも金融や保険、医療の規制緩和など幅広

        い分野を対象としています。また国民生活を守るためのさま

        ざまな制度や仕組みを、国を超えた自由な取引・企業活動に

        対する規制だとして、緩和・撤廃を迫っています。

         日本がTPPに参加すれば、日米だけで参加国のGDP(国

        内総生産)全体の9割を越えることになり、アメリカ製品の

        日本への輸入規制が完全になくなります。

         日本の食糧自給率は、TPPへの参加により40%から14% 

        に落ち込みます。日本の食の主権がなくなります。またアメ

        リカに対する「牛肉の規制」や「農産物の農薬」の規制が緩

        和、撤廃され、食の安全が危機にさらされます。

混合診療で広がる「医療格差」

         また、株式会社の病院経営が認められれば、利潤追求のア

        メリカ資本が自由診療の病院チェーンを日本で展開すること

        にもなります。営利を求める病院経営では、お金を払える患

        者かどうか品定めをし、患者の差別が発生し、さらに産科、

        小児科、救急医療などの不採算部門からの撤退がおこり、医

        療が営利優先の事業になっていくでしょう。

         公的な病院も民営化され、医療を受ける権利が狭められ、

        ますます格差が広がっていくでしょう。

日本の皆保険制度が崩壊

  アメリカでは病院と医師は保険会社の支配下

   アメリカには、日本やヨーロッパなどのような公的健康保

  険制度がありません。保険会社の政治献金を受けた議員の抵

  抗で、公的な健康保険制度をつくれないのです。病院と医師

  は保険会社の支配下にあり、民間保険会社が医療に介入し、

  コストを引き下げ、大もうけをしています。

         アメリカの民間保険会社は、日本の公的な保険制度を骨抜

        きにし、市場として介入しようとしています。

         アメリカでは保険に入れない人が4000万人ともいわれ

        ています。映画『シッコ』(マイケルムーア監督)を観た人も

        いるでしょう。無保険者が病院を追い出され、夜中に路上に

        うち捨てられるのです。

         医療費を比較しても、盲腸の治療費は日本で20万円がアメ

        リカでは100万円、抜歯は日本では5000円がアメリカ

        では10万円、お産は日本では40万円がアメリカでは100

        万円~150万円という調査報告があります。

         日本の医療費が先進国で安すぎ、アメリカで高すぎるので

        す。民間保険しかないアメリカでは、世界一医療費がかかり、

        一方で、WHOの健康指標では世界十数位です。医療費の多

        くが保険会社に収奪され、国民・患者に還元されていないの

        です。

         医療生協は、全日本民医連、日本医師会などの医療団体と

        ともに日本の医療と社会保障制度の未来のために、TPP参

        加反対の運動を大きく進めていきます。

 

 

 

 

社会保険の未加入解消は_設計労務単価の引上げが先だ

神奈川土建一般労働組合相模原支部 原 良雄さん

 

         どうしても頭の痛いことばかり・・・

         昨年末、建設業許可の更新があり、手続きを済ませたとこ

        ろ、県土整備局から「社会保険加入のお願い」が届いたとい

        う仲間。内容は、「貴社は、建設業許可申請時に社会保険・厚

        生年金に未加入であり、提出期限4カ月以内に指導に従わな

        い場合、3日以上の営業停止処分に課せられます」と。

         国交省は、建設業の再生と発展のため、若年技能工不足は、

        不良・不適格業者が多すぎるためとして、今後5年をかけ未

        加入業者を排除するためだそうだ。

         加入が良いことは、誰でもわかっている。しかし建設業の

        発展をいうなら、若年労働者が安心して結婚、子育てができ

        る賃金や保険制度、それを賄うための設計労務単価の引き上

        げなど、そちらを先に改善してもらいたい。

         この問題では、労災隠し対策と同じで一人親方が激増し、

        今以上に末端の建設職人が低賃金に苦しむのではないかと心

        配される。未来を築く建設の若者が安心して生活するには、

        今、行われている組織拡大をはじめ、組合の運動なくしては

        改善はあり得ない。

         

 

 

 


 

奏者の目線(Ⅶ)_オーケストラを支えるのは自治体

         神奈川県公務公共一般労働組合神奈川フィル分会

                    コントラバス奏者 杉本 正さん

         1985年に立ち上げた神奈川フィル労組の活動は、手さ

        ぐり状態ながら大きな妨害もなく順調に滑り出しました。

         しかし、私は音楽家ユニオン本部の会議に出席して、全国

        のオーケストラの情報を知ることで、神奈川フィルの置かれ

        ている状況を知り、がく然としました。

         当時の東京都交響楽団の平均月収が30万円、京都市交響楽

        団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、群馬交響楽団、札幌

        交響楽団がそれぞれ約25万円に対し、神奈川フィルは7万1

        200円という、まさに雲泥の差と言うべき状態でした。

         どうしてこのような違いが生まれるのだろうか、そしてど

        うしたらその差を埋めることができるのだろうか、組合員み

        んなで話し合いました。

         それぞれのオーケストラの発足の経緯や規模、地域性、仕

        事の量や質の問題などさまざまな要因が個々にあります。単

        純に比較できる問題ではありませんが、一つ決定的な要因と

        して挙げられるのが自治体からの補助金の違いでした。

         東京都の9億円、京都市の4億円をはじめとして、名古屋、

        群馬、札幌などのオーケストラが最低でも2億円の補助が自

        治体からありました。これに対し神奈川フィルは、神奈川県

        から4000万円、川崎市から500万円という桁違いのあ

        りさまでした。

         自治体からの補助金を増額させるためにはどうしたらよい

        だろうか。途方に暮れていた私たちに、連帯の手をさしのべ

        てくれたのが、神奈川県職員労働組合(以下、県職労)でし

        た。昼休みコンサートや駅前の街頭宣伝などを企画して、私

        たちに訴えの場を与えてくれたのです。

         県職労の協力の下に定期的に宣伝活動を続けたことによっ

        て、古今東西のオーケストラは決して採算がとれるのもでは

        なく、自治体などの補助があって初めて活発に活動できるも

        のだということへの理解が広まり、自治体からの補助金の増

        額につながっていきました。

         街頭宣伝などを指導してくださったのは、当時の神奈川県

        職労本庁支部書記長の蓮池幸雄さんでした。蓮池さんにはハ

        ンドマイクの構え方など基本的なことから教わりました。そ

        の蓮池さんが30年の時を経て、私たちの所属する神奈川県公

        務公共一般労組書記長で、今回の解雇事件では「解雇を撤回

        させ神奈川フィルを良くする会」の事務局長をしてくださっ

        ていることに深いご縁を感じます。

 

 


 

マスコミの点検をよびかけます_第161回配信 2013年4月1日

マスコミの点検をよびかけます

         悪いことは隠されるが、良いことは目立たない。正確に言

        えば「良いことはマスコミに報道されにくい」からです。

         新聞大手5社と在京テレビのトップが、安倍首相と個別に

        会食したことが報じられました。「会ってはいけない」という

        ことではありません。しかし、報道人として権力の代表者と

        長時間の面談をしたのなら、その内容を自らの媒体で記事や

        ニュースとして正確に公開すべきでしょう。

         「不偏不党」「権力の監視役」「社会の木鐸」などと自らを

        語るのならば、面談内容をきちんと記事にして「読者の知る

        権利」に責任を果たすべきでしょう。

         一方で、首相官邸前の「原発いらないデモ」は長い間無視

        されました。庶民の「切実で、共通した思い」から出た行動

        は、大切で良いことだから無視されたと考えざるを得ない。

         今回の配信で、安倍内閣が決めた4月28日の「主権回復の

        日」についての、丸山重威さん(ジャーナリスト)の文章を

        転載しています。現在も多くの被害を生み続ける日米安全保

        障条約の源流になった、サンフランシスコ平和条約発効の日

        が、心から祝える日であったのかを考えたいものです。

         その上で、読売・産経・朝日・日本経済・毎日の各紙と共

        同通信、そして在京テレビ各局を点検する機会になります。

 

 


 

社会保険未加入は責めて_法違反の原価割れ契約を許すのか

横浜建設一般労働組合「けんせつ横浜」から

 

         建設業の中小零細事業所の多くは、法人企業でありながら

        「厚生年金」「雇用保険」などの社会保険に加入していない状

        況が指摘されています。国は、このような労働環境が「若年

        技能労働者の確保を困難にしている」として、2017年ま

        でに建設業許可の法人事業所を社会保険に加入させる方針で

        す。

         しかし、とくに建設業の場合は技能者を抱えている事業所

        は零細企業であり、請負契約では上位会社から、あるいは発

        注者から「原価割れの契約」を強いられ、まともな賃金すら

        払えないのが実情です。

         「通常原価に満たない請負金額の強要」や根拠のない請負

        代金の減額(赤伝処理)が横行しているのです。(建築業法19

        条違反行為)

         こうした元請・下請け間の不公正な取引の慣習を法律的に

        規制し、対等平等の関係を確立することなしに零細企業の経

        営は成り立ちません。

         建設労働者の年金権の確保は喫緊の課題ですが、必要経費

        として、保険料などの法定福利費を事業所が確保できなけれ

        ば負担に耐えられません。そのため労働者を社員から外して

        「外注化」するなどして、違反を回避する動きが拡大するこ

        とは、国土交通省も認識している通りです。

         私たちは国土交通省に対して、「社会保険料の負担分となる

        法定福利費」などの必要経費を別枠支給、別枠明示などを求

        めています。社会保険加入が零細業者の経営を圧迫せず、労

        働者も将来の希望をもって働ける環境づくりを求めています。

        同時に、数兆円規模の大企業と、零細な一人法人でも負担率

        が一律という社会保険料負担の軽減措置などが必要です。

         国は、2017年までに許可業者を100%社会保険に加

        入させる方針です。私たち横浜建設一般労組は、全力を挙げ

        て事業者の経営を守り、社会保険未加入対策に万全の取り組

        みを行います。

 

 



主権回復の日?_沖縄は日本ではないというのか

ジャーナリスト 丸山重威さん

 

         参院選までは「タカ派色」は隠し、安全運転で行くはずの

        安倍内閣だが、春が近づくとともに、隠したツメを見せ始め

        ている。

         施政方針演説では、改憲議論を深めることや原発再稼働、

        「平成の学制大改革」を打ち出し、「国家安全保障会議」にも

        言及。続いて、沖縄・名護漁協への辺野古埋め立て同意要請、

        四国山地ではオスプレイ低空飛行訓練、戦闘機部品の「武器

        禁輸三原則」例外扱いが出てきた。国会でも「国際的集団安

        全保障参加の道を開く」とか「憲法96条改正に全力」「東京

        裁判は勝者による断罪」とエスカレートした。

         極めつきは「4月28日を『主権回復の日』として天皇も出

        席して式典を開く」とした閣議決定。確かに61年前、サンフ

        ランシスコ平和条約が発効して日本は国際社会に復帰したが、

        この平和条約で沖縄は本土と切り離された。沖縄では「屈辱

        の日」で、今の沖縄の苦難はそこから始まっている。

         沖縄では「沖縄切り離し平和条約」の基になった「天皇メ

        ッセージ」がよく知られている。昭和天皇側近の寺崎英成は

        1947年9月GHQを訪ね、「独立後も沖縄の米軍駐留を希

        望する」との天皇の意思を伝えた。米公文書で発見され、入

        江相政侍従長の日記も裏付けた。

         安倍首相は、沖縄の民意を無視し神経を逆なですることを

        狙う「正面突破作戦」に出たのか、認識不足による「想像力

        の欠如なのか?

         沖縄では反対運動が始まり、メディアも立ちあがった。だ

        が、本土では地方紙を除き全国紙の社説は沈黙。やっぱり沖

        縄は日本ではないのか?

 

  日本ジャーナリスト会議の機関紙「ジャーナリスト」第660

号(3月25日づけ)のコラム「視角」から

 

 




「まさか・・・」がある県政を考えてください

「新かながわ」編集長 瀬谷昇司さん

 

         芸術家や美術評論家などにインタビューした「オピニオン

        『神奈川臨調を考える――芸術を生み、育てる側から』が、

        3月末にパンフレットとして、新かながわ社から出版される。

         ある集会でジェームス三木さんが「文化と政治どちらがえ

        らいか」という話をした。「ナポレオンとモーツアルトは同じ

        時期に生きていたが、今日ナポレオンのお世話になることは

        ない。モーツアルトの曲を聞かない日はない」といった。パ

        ンフレットは文化の側から県政へのメッセージだ。

         パンフレットから抜粋すると「神奈川臨調とは、2012

        年3月に設置された県緊急財政対策本部(本部長・黒岩祐治

        知事)に助言する外部有識者調査会。『行財政基盤の確保を図

        るための検討を行うにあたり、意見を述べる』としている。

         私たちがインタビューしたときは『まさかこんなことを』

        と半信半疑の人も多かったが、県立博物館の貸し出し・閲覧

        機能の停止を神奈川県が発表するに及んで彼らの言っていた

        ことが現実味を帯びて、県民に明らかになってきた。

         執筆の宮田徹也氏は「インタビューで『賛成・反対』を問

        わなかったことによって、個々の方々の多様な発言が飛び出

        し、美術の本質が浮き彫りになりました」。大山奈々子氏は

        「お話のなかの人生をかけた含蓄・・・、回を重ねるごとに

        文化の持つ力を思い知り」とある。