TPPは民主主義に反しないか_第159回配信  2013年3月18日

         安倍首相が13日、TPP(環太平洋経済連携協定)への参

        加を表明しました。

         世論調査によると、賛成する人が意外に多いことに驚きま   

        した。影響力が落ちているといわれる「大新聞」やテレビで

        すが、やはりその影響力は確かに存在するのでしょう。その

        「世論調査」というものが、意図的に誘導されているだろう

        ことは総選挙などの例を見れば想像はできますが。

         TPPの交渉は『非公開』だということ、国内法より優先

        するISD条項(別名・毒素条項)があること。この2つを

        とっても、TPPは民主主義となじまないどころか、民主主

        義を否定する性格を持っていることが分かります。

         極端な例ですが、地方自治体が住民の意思を反映して住民

        のための制度をつくっても、市場参入を妨害されたとしてI

        SD条項を適用され、損害賠償を求められることも考えられ

        ます。地域振興のために「地産地消」を促したり、地域経済

        の発展のために地元企業を優遇するような政策が狙われる可

        能性があります。

         飛躍するようですが、日米安保条約と同じように、日本国

        内の民主主義よりTPPが優先する社会になると感じます。

        若者たちにも真剣に考えてほしいと訴えます。

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米軍通報の「未公表問題」_横須賀市長は責任と論点ずらしたまま_米海軍、横須賀市、国と地位協定上のルールで合意

  06年以降「未公表」にした市当局の責任は免れない

       原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会

                  「阻止連ニュース」から         

         2012年8月下旬に、市民団体(住民投票を成功させる

        会)が記者会見で明らかにした、横須賀市に米軍が通報した

        情報の「未公表」問題は、当時、大きく報道された。

         この「未公表問題」に関して神奈川新聞が14日、社会面に

        『油漏れ情報公開 市、国とルール合意』という記事が掲載

        された。半年もの歳月を要して。

         同記事によると、米軍艦船からの油漏れが起きた際の通報

        の枠組みで大筋、米海軍当局と市、国が合意し、環境への影

        響が大きくなく、日米間で通報を定めた例に該当しない事故

        でも米軍当局が情報を公開、4月の運用開始を目指すという

        内容だ。

         そもそも市民団体が追求した「未公表問題」は、米軍など

        から原子力空母ジョージ・ワシントンからの油漏れなどの通

        報を受けていながら、「市当局が市民や市議会にも報道機関に

        も公表していなかった事案がある」と明らかにしたものだ。

        2006年を境に「未公表問題」は集中している。

         この問題が大きく報道された直後、吉田雄人市長は記者会

        見で「前例にならった。市民生活に大きな影響はないか、港

        湾の環境に影響はないか、そういう観点から判断して公表を

        控えた」と、自らが未公表にしたと認めている。

         しかし、その後、吉田市長は未公表にした経過と責任の所

        在については「当時の担当者がもういないため、確認できな

        かった」と調査打ち切りを示唆。一方、「米軍提供施設内で発

        生した油漏れは一時的にどこが公表するのか検討が必要。日

        米地位協定第3条の管理権との関係もある」と議会で答弁し、

        あたかもルールがなかったかの問題にすり替えようとした。

         14日の神奈川新聞は、この吉田市長のシナリオにそって米

        軍、国、市との間に合意ができたというものだ

         合意内容、新しいルールについては内容を精査する必要が

        あるが、わが国にとって不平等かつ屈辱的な「日米地位協定」

        の抜本的な改訂ではなく、運用上にとどめている問題点があ

        る。この合意をもって、未公表問題の経過と責任の所在を決

        して帳消しにするものではない。

 

  この原稿は、原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会の「阻止連ニュース」3月15日付け(No.1435号)から

 

 

 

 

被災地で 傾いた離れに暮らす老夫婦を見舞った

         昨年11月、大震災から1年8カ月経っていましたが、北上

         川河口の大川小学校跡を訪ねてきました。昔、夫が単身赴

         任の時にお世話になった、石巻に近い豊里の旅館のお見舞

         いを兼ねた訪問でした。

          テレビで報道されたところですが、津波で全校生徒108

         人中74人が死亡・行方不明になったところです。現在、

         小学校は廃校となり、犠牲者を悼む碑が建ち、たくさんの

         花が供えられていました。

          津波が堤の一角を崩して入りこみ、電信柱の上まで達し、

         周りにあったたくさんの民家が、一軒残らず引き波でさら

         われていったそうです。

          コンクリート造りの二階建ての屋上に、バスが打ち上げ

         られていましたが、いまは地面に降ろされていました。

          雄勝湾にある雄勝小学校は、チリ津波の教訓から山にの

         がれ、生徒は無事でした。

          ダンプカーやショベルカーが全国から集まり、新しい堤

         や橋を造るなど、残土を盛り上げていました。雄勝町は硯

         で有名なところで、東京駅の瓦にも使われています。

          豊里の旅館は傾き、割れた食器や散乱した家財ともども、

         全部片付けてもらったとのことでした。老夫婦は、残った

         離れに暮らしていましたが、ちょっと傾いていると言いま

         す。復興予算からお金が下りているが、それもこの春まで。

         別に暮らしている息子の家では、妻は医療関係の仕事をし

         ているが、息子は失職したと言います。

          夕暮れ時に、車窓から見た仮設住宅はひっそりとして、

         先の見通しが立たない高齢者には、どんなに心細いことか

         と思われました。

          福島原発の問題もあり、復興はまだまだですね。

  この原稿は、よこはま健康友の会の機関紙「暮らしとからだ」第589号

(3月1日づけ)から

 

 

 

奏者の目線(Ⅴ)_音楽家と労働者の狭間で(1)

           神奈川県公務公共一般労働組合 神奈川フィル分会

                   コントラバス奏者

         神奈川フィルで1982に起こった解雇事件の際に、音楽

        家の唯一の職能労働組合である「日本音楽家ユニオン」(以下、

        音楽家ユニオン)に相談したことをきっかけに、楽員の間で

        労働組合結成の機運が高まりました。

         私が入団した83年には、音楽家ユニオン本部の役員がしば

        しば神奈川フィルを訪れ、楽員と会合を重ねて支部結成の準

        備を進めていました。

         入団したばかりの私に、結成準備会の人たちは、なぜオー

        ケストラに組合が必要かというような話をていねいにしてく

        れました。一方で、組合結成に賛成していない団員もいまし

        た。

         労働組合に加入すべきでないという理由には、さまざまな

        ものがありました。「神奈川フィルに組合を作ると、神奈川県

        が補助金を打ち切る」ということを真剣に言う人もいました。

        すでに組織として機能している「楽員会」との関係を懸念す

        る人もいました。

         さまざまな理由の中で、いちばん大きかったのは、「音楽家」

        と「労働者」という2つの概念が、共存することがなじまな

        いという考え方でした。

         今でも、その考え方を払しょくできないで、「音楽家」のプ

        ライドをくすぐられて、経営者の言いなりになっている楽員

        もいますし、今回の楽員に対する理不尽な解雇を容認するよ

        うな横浜地裁の不当な決定も、「音楽家」が「労働者」である

        ことを裁判官が理解していないことが、一つの大きな要因だ

        と思われます。

         その当時も、「聴きに来てくれた人たちに夢を与えるのが私

        たちの仕事。お給料が安いなどと、外に向かって言うべきで

        はない」。そんなことを言えば聴衆が離れて行くことを危惧す

        る人がいました。「私たちは芸術家なのだから、お金のことを    

       いうのはよくない」という潔癖な人や、「ちゃんとやっていれば、

       お金なんて後からついてくるよ」というような楽天的な人も

       いました。お給料をもらって働いているにも関わらず、労働を

       しているという意識の低い人が多くいました。

        当時の私には誰が言っていることも、それなりに一理である

       ように思えました。しかし、いろいろな人の意見の中で、いち

       ばん心に響いたことばと、最も許せなかったことばが、私に組

       合結成への参加を決意させることになりました。

  この原稿は、「新かながわ」第2210号(3月10日付け)「自由の窓」か

 

 

 

 

 

 

 

 

奏者の目線(Ⅵ)_音楽家と労働者の狭間で(2)

         1985年1129日、神奈川フィルの最初の労働組合・

        「日本音楽家ユニオン・神奈川フィルハーモニー管弦楽団支

        部」の結成総会が、横浜海員会館で行われました。

         私たち神奈川フィル楽員が労働者であることを高らかに宣

        言した記念すべき日でした。新入団員だった私は、結成総会

        で司会を務めました。

         本部役員のていねいな指導と、準備会の地道な活動の成果

        で、結成時点ですでに楽員の過半数が参加し、数年後には4

        分の3の楽員が参加する多数組合となりました。全員参加で

        あった「楽員会」との折衝も円滑に進み、後に楽員会は発展

        的に解散することを決定しました。

         日本音楽家ユニオンの「オーケストラ・合唱団協議会」の

        会議に初めて参加して、全国のオーケストラと情報を共有し、

        共通の問題を話し合うことで、当時は最後発のオーケストラ

        であった神奈川フィルが、初めて全国のオーケストラと同じ

        土俵に立てた思いがしました。

         初めての団体交渉、初めての街頭宣伝、初めてのレクレー

        ション、初めての機関紙作成、組合活動のすべてが初めて経

        験することばかりでした。

         当時、街頭で配ったビラが手元にありますが、「交響曲第1

        番・86春闘」と題され、第一楽章「神奈川県民に愛されるオ

        ーケストラを目指して」、第2楽章「私たちも労働者」、第3

        楽章「想像を絶する低賃金」、第4楽章「職業経費も自前」、

        というオーケストラらしい体裁のビラでした。

         どの訴えも、そのまま現在でも通用するものばかりです。

        裏を返せば30年近く経っても、何も達成できていないのかも

        知れません。

         「奏者の目線(Ⅴ)」で、私が組合への参加を決めた2つの

        ことばがあると書きました。

         心に響いた人のことばは、初代委員長、竹重渉さんの「音

        楽家の仕事は、音楽することと、音楽する環境を整えること。

        ひとりでも音楽の研鑽はできるが、環境整備はみんなで力を

        合わせないとできない」。今でも職場のみんなに訴えたいこと

        ばです。

         もう一つ、許せなかった人の言葉は、「組合なんて下手な連

        中が、練習しないで金のことばかり言っている集団だ」。今で

        も職場で時どき聞くことばです。

         私たちが、いつまでも音楽家と労働者の狭間をさまよって

        いるようでは、オーケストラという職業を社会に正く理解し

        てもらうことはできません。

 

 

 

 

課題は多いけど チャレンジの知恵を絞りましょう_第158回配信  2013年3月11日

         東日本大震災から、そして福島原発事故から2年が過ぎま

        した。質の違った2つの大きな出来事から、私たちは多くの

        ことを学びました。でも、まだまだ足りません。時が経つに

        つれて、学ぶことはたたかいが必要になります。私たちは、

        この分野でも人を守ってたたかわなければなりません。

         人を守るうえで、社会保障を充実させることは、被災者の

        ためにも大切です。別ファイルに添付したように、「かながわ

        社会保障学校」が3月20日に開催されます。テーマは、生活

        保護、年金制度、最低賃金。案内を参照して、ぜひ直面する

        「生きる権利」について考え、力を貸してください。

         3月20日、キャンプ座間への自衛隊戦争司令部移駐反対の

        集会が座間公園で開かれます。これも別ファイルに案内を添

        付しています。自衛隊で唯一の海外派兵を指揮する陸上自衛

        隊中央即応集団司令部が、3月末にキャンプ座間に移駐して

        きます。黙っていたら、キャンプ座間の米陸軍第一軍団司令

        部とともに、座間・相模原両市は日米の戦争司令部の街にな

        ってしまいます。

         せっかくの春ではありますが、課題は山のようにあります。

        すべてに取り組めなくても、一歩でも二歩でも心を寄せるチ

        ャレンジに知恵を絞りましょう。

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立てないものは立てない!_自分の思想信条に従って行動しよう!

 ―ヤバいぞ!自民党の憲法「改正」草案―

          「君が代不起立個人情報保護裁判」を支援する会

フロア対面方式がつぶされて日の丸がステージに

         生徒たちが作り上げたフロア対面方式を押しつぶして、日

        の丸がステージに上がり、君が代斉唱が行われるようになっ

        た。その実施が100%になるや、県教育委員会は、教職員

        が君が代斉唱時に起立して敬意を示すこと、生徒に範を示す

        ことを求めてきた。それに従えない者の氏名を集め、いつで

        も処分できる状態が生まれた。

教育委員会による教育現場への介入

         思想信条情報の収集を行ってはならないことを自ら条例で

        定めておきながら、氏名収集を行い、神奈川県個人情報保護

        審査会、同審議会がともに「やってはならない」と答申を出

        してもそれに従わなかった。そこから私たちの裁判闘争は始

        まった。現在、最高裁で争われている。

         裁判闘争のさなか、昨年、「指導主事」や「指導課長」まで

        が「指導」と称して不起立者のいる当該校に来校した。まさ

        に、行政権力による露骨な教育現場への介入であり、私たち

        は速やかに抗議文を送った。誰が来ようと、立てないものは

        立てないのだ。思想信条問題とはこういうことなのだ。

不起立者攻撃の次は、生徒への強制

         現時点では不起立教職員が問題になっているが、これに一

        定のメドがつけば、次にくるのは生徒への強制であろう。大

        きな声で君が代を歌わせているか、心をこめて歌わせている

        かなどが問題にされてくるであろう。指導が「生ぬるい」と

        なれば、指導力不足教員のレッテル貼りや、人事評価におけ

        る低評価が待ち受けているのであり、生徒に対しては愛国心

        評価の通知表が待っているのである。この問題は逃げても次

        つぎ追い打ちがかかってくる。そのような性質のものである。

        音楽教師にはピアノ伴奏も含めた指導の強制も起こってくる

        であろうことは想像に難くない。このようにして、愛国戦士

        と戦争を支える教師を育成しようとしているのだ。これは絵

        空事ではない。

見えてきた日の丸・君が代強制の真のねらい

         北九州、東京、大阪ではすでに問題になっていることであ

        る。橋下徹大阪市長は、大阪府知事時代にいわゆる「君が代

        起立強制条例」「君が代処分条例」(3回の職務命令違反でク

        ビ)をつくった。

安倍政権は改憲草案をすでに公開している。それによれば

        天皇を元首とし、憲法を超越した存在にしようとしている。

        文字通り「君が代」の世界を再び実現しようとしているのだ。

        また、日の丸・君が代の「尊重」まで憲法で規定しようとし

        ている。日の丸・君が代強制の真のねらいが明確になってき

        た。

         『あのとき闘っていれば』と後悔したときには、すでに身

        動きができない状態になっているだろう。想像力をゆたかに

        して、日の丸・君が代強制や憲法改悪に立ち向かっていかな

        くてはならない。本当の闘いはこれからである。

 

 

 

 

君が代不起立個人情報保護裁判_私たちには保護はないのですか

  最高裁の要請行動で訴えたこと

        君が代不起立個人情報保護裁判を支援する会 会員Nさん

 ここに掲載するのは、1月23日の最高裁への

要請行動の際に、代表の1人として訴えた「支援

する会」の会員Nさんの訴えの要約です。

         神奈川県条例を守りながら生活している神奈川県民の一人

        です。

         私がこの裁判に関心を持ったのは、県条例で禁止している

        思想信条にかかわる個人情報を「行政側が勝手に集めていい

        のだろうか?」ということでした。

         私たち県民が条例違反をした場合は罰せられるのに、行政

        が違反した場合はどうなるのでしょうか。

         その点については、県条例でいわゆる不服申し立てについ

        てきちんと規定されているということで安心していました。

        しかし、今回の教育委員会の氏名収集の行為は、規定に基づ

        いて「審査会」がNOと判断し、例外としても「審議会」が

        認められないと判断したにもかかわらず繰り返されています。

        とても不安になりました。私たち県民は、このような行政権

        力の横暴に対して、何の手だてもないのでしょうか?

         そこで、司法に判断してもらおうと裁判に訴えましたが、

        一審・二審とも行政権力の横暴を阻止しようとしませんでし

        た。

         神奈川県条例の下で生活している私たちは、法律上の保護

        はないのでしょうか?

         どうか公正な判断をお願いします。

 

 

 

 

公務員の早期退職から考える_『強い経済』のまくら言葉は『弱者は切り捨てて』

          医療生協かながわ生活協同組合

                   ドリーム俣野支部 望月和郎さん

         教員、警官の早期退職が問題になりました。職場放棄みた

        いなことまでいわれました。誰もが定年いっぱいまで勤めた

        いに違いありません。ところがそうすると退職金が100万

        円から少なくなってしまうのだそうです。

         おかしな話です。1、2カ月とはいえ、定年前の退職だと

        少なくなるというのなら分かりますが、その逆です。基準を

        定年者の出る3月末にすれば問題ないのに、2月末にしたの

        では早期退職を奨励するみたいなものです。基準・規則を換

        えるなら、そのくらい考えてからすればと思います。

         生活保護費が引き下げられるということです。その理由が

        低所得者の収入より生活保護費の方が上回っているからだと

        いうのです。もちろん、どちらも生活費ぎりぎりの程度です。

        そのようにするのなら、低所得者の収入が生活保護費より多

        くなるような方策を講じるべきではないでしょうか。それが

        政治と言うものではないでしょうか。

         この他にもいろいろ考えると、安倍総理の『強い経済』と

        いうのは『弱者は無視し切り捨てて』がつくような気がしま

        す。

 

 

 

 

資本主義は人を守らない だからルールが必要だ

                  「新かながわ」編集長 瀬谷昇司さん

         3月4日発売の『週刊東洋経済』によれば、『ユニクロ 疲

        弊する職場」という記事で、3年以内の離職率が5割という

実態を暴露している。毎年数百人を採用する大企業としては

        高水準。その実態は次のようなものだ。

         ユニクロでは、サービス残業が厳しく禁じられている。「サ

        ービス残業が発覚した場合には、降格、店長資格はく奪など、

        人事による懲戒処分がおこなわれる。実際、長期間にわたり

        サービス残業を強要・黙認していた店長には退職勧奨が行わ

        れた」という。

         こうした職場の矛盾を一身に背負うのが管理職の店長。部

        下には仕事を押しつけられず、その仕事を一手に引き受ける

        ことになるが、残業代も支払われない。店長とは名ばかりで、

        仕事は本部指示のマニュアル通り、創造性を生かすこともで

        きない。店長になっても年収400万円程度。おしゃれで、

        丈夫でやすく、世界へと羽ばたいているイメージが強かった

        ユニクロだが。

         戦後の経済成長、オイルショックを経て日本はジャパン・

        アズ・ナンバーワンの地位に上りつめた。そこでの成功体験

        は、誠実に働きぬけば成功する、という意識をつくった。身

        を粉にして働けば自動車やマイホームが持てたという時代だ

        ったが、その成功体験を今、見直してみる時代にきている。

         ルールある資本主義へ見直すことが必要だろう。

 

  新かながわ」2201号(3月10日付け)のコラム「各駅停 車」

 

 



 

原発を、労働や廃炉の視点からも考えたい_第157回配信   2013年3月4日

         埼玉土建一般労働組合は、機関紙「埼玉土建」の新年号で

        「脱への動」をテーマにした。以下は、同労組の煙山敏行さ

        んの報告(「機関紙と宣伝」No.958)の要旨です。

「脱原発への動」で大切にした点は「原発で働く仲間は、

私たちと同じ建設労働者」という視点だった。地元いわき市の渡辺市会議員に取材すると、「原発で働いている仲間は『脱原発』の世論や官邸前の抗議行動に集まる人に対し不信感を抱いている」ということが分かった。

         原発従事者も共感できるのは何か? 原発従事者自身が言

        っているのは「原発の『廃炉』が持つ可能性」。調べると、原

        発の廃炉こそ、原発従事者の「雇用問題」を解決する有効な

        手段で、ドイツには実際に廃炉で雇用を増やしている実例が

        あり紙面で紹介した。原発に替わる「再生可能エネルギー」

        だけでなく、廃炉と雇用を取り上げることで、脱原発への道

        筋を説得力を持って紙面化できた、と煙山さんは書いている。

         原発の廃炉の視点は、まったく報道されていないわけでは

        ありませんが、労働者の問題や労働運動の視点からの報道は

        本当に少ないと言えます。職場から共産党員やその支持者を

        追い出し、労働組合の自主性を奪い、自由にものが言えない

        社風をつくってきた東京電力 にふれる報道はまずありません。

         事故の検証はこうした背景にも迫る必要があるでしょう。

・・・・・・・・・・・・この配信の使用上の注意・・・・・・・・・・・・

1.使用料はすべて無料です。ただし、使用した場合は今後の参考にするため

 に使用内容のメモをメールかFAXで機関紙協会にお知らせください。

2.すべて善意の提供記事です。使用に当たっては下記の事を守ってください。

(1)転載する場合は、原則として原文のまま使用してください。

(2)原文に手を加える場合は、原稿の趣旨を変えない範囲での加筆・削除を

  認めます。

(3)数字の表記と見出しは、みなさんの編集部の基準に合わせて変更しても

  差支えありません。

3.不明な点は、下記の連絡先までお問い合わせください。

 

 

 

 

裁判長、わたしたちの声きいて! 問題は日産の脱法意図です

             日産とたたかう仲間を支える会「支える会通信」

ルノーでは雇用を守り、日産では切り捨て

         日産自動車CEO(2001年就任)のカルロス・ゴーン

        は、2005年には親会社のルノーの取締役会長とCEOも

        兼任しています。そのフランスのルノーでは、労働組合と雇

        用保護に献身する「国際枠組み協約」を締結しています。

         06年のルノーの業績悪化の時も従業員の解雇は行わずに、

        09年の販売台数を大幅に伸ばして売り上げを高め、営業利益

        を上げることで乗り切りました。

         しかし、日産の場合は、リーマン・ショック赤字で2万5

        千人の従業員を削減しました。「赤字でも解雇なし、販売台数

        の増加で守りぬけたルノー」と、「赤字を従業員の生活切り捨

        てて充当した日産」とは、対応で明暗が分かれました。

正規か非正規かではなく、

労働者の権利が侵害されているのがいちばんの問題

         とかく非正規労働者に関する裁判においては、形式的な労

        働契約の存在が重視されています。これは、裁判官の考えの

        根元に「労働者が派遣・有期の働き方を承知して契約を結ん

        んでいた」という捉え方があるからです。

         しかしこの契約の背景には、労働者を安い賃金で働かせ、

        しかも、いつでも簡単に解雇できるような形式にするという

        企業側の脱法意図があり、正規から非正規への置き換えが多

        くのところで横行しています。このような、あからさまな脱

        法意図を、法が許していいはずがありません。

証人調べの傍聴応援をお願いします *傍聴券の抽選は10分間だけです

  ☆3月19日(火)10:00傍聴券 10:30開廷

        10:40 被告:日産側証人1人 原告側証人1人

        13:40 原告 岡田

  ☆4月18日(木)10:00傍聴券 10:30開廷

        10:40 被告 日産車体側証人2人

        13:40 被告 日産車体側証人2人

  ☆5月16日(木)13:00傍聴券 13:30開廷

        13:40 原告 釜倉 原告A

  ☆6月13日(木)10:00傍聴券 10:30開廷

        10:40 被告 日産側証人2人

        13:40 被告 テンプスタッフ側証人2人

              原告側証人1人

  ☆7月16日(木)10:00傍聴券 10:30開廷

        10:40 原告 阿部

        14:50 原告 土谷

 

 

  この原稿は、日産とたたかう仲間を支える会の「支える会通信」2月18日付けから、編集部の了解を得て配信しています。

連絡先〒231-0062横浜市中区桜木町3-9

   TEL045(201)3684

メール sasaerukai5@gmail.com

 

 

 

 

大震災から2年 放射能で遅れる復興_原発事故の罪の深さを感じています

                        いわき市 清水英之さん

         福島県の復興は一定ていど進んでいますが、原発事故の影

        響で、その進行度合いは遅れています。

         私が勤務している国土交通省磐城国道事務所が管理する国

        道6号線は、警戒区域外はかなり前に「災害復旧」が終わっ

        ていました。しかし、警戒区域の「災害復旧」は、やっと2

        013年3月に完了します。

         このように警戒区域の「災害復旧」が遅れたのは、放射線

        の被曝作業だからです。工事を行う際には防護服を着て作業

        しなければなりません。また被曝管理のために時間制限があ

        り、1日当たりの作業量が制約され期間が長くかかりました。

手抜き除染

         福島県では除染が本格的に始まりました。現在、警戒区域

        の中で環境省により除染が行われています。

         しかし、この除染を請け負っている「鹿島建設を中心とし

        た共同企業体」と、「大成建設を中心とした共同企業体」、「前

        田建設工業を中心とした共同企業体」で、「不適切除染(別名

        :手抜き除染)」が行われていたことが明らかになりました。

         この事件には、いくつかの原因があります。

         まず第1に、これまで規制官庁であった環境省が除染とい

        う公共事業を始めましたが、同省は公共事業の実施に慣れて

        いないため監督体制が弱いこと。

         第2に、元請けの各共同企業体が下請けを何階層にも渡っ

        て使い、元請けの指示が除染を担う末端の労働者まで伝わっ

        ているかどうかが不明なこと。

         第3は、除染に当たる労働者のモラルの問題です。除染労

        働者は地元の福島県の住民が少なく、他県からきた人たちで

        おもに構成されています。その多くは、除染という仕事につ

        いての社会的使命への意識より、1日当たりの賃金が一般の

        建設工事より高いという理由が優先しています。

         彼らは「寮」と呼ばれる大部屋で雑魚寝をして暮らしてい

        て、夜は酒を飲んで騒いでいると聞いています。昼間は除染

        というたいへんな労働をしているため、ストレスを発散した

        いのでしょう。いわき市は除染労働者の夜間居住地となって

        いて、治安が悪くならいよう願っています。

原発事故は人災です

         警戒区域内の住民が、いわき市に避難して移り住んでいま

        す。実質的な、いわき市の住民は大幅に増えました。病院も

        患者さんが増え、待ち時間が長くなっています。車両も増え

        て、交通渋滞は慢性的です。

         東日本大震災から2年ですが、福島県の復興はさまざまな

        問題を抱えて前途多難な状態です。改めて、人災である原発

        事故の罪の深さを感じています。

 

  この原稿は、日本機関紙協会宮城支部の機関紙「みんながデスク」第118

 号から、編集部の了解を得て配信しています。

 

連絡先 

3月まで 〒984-0015仙台市若林区卸町4-7-1

     TEL 022(235)4065

4月から 〒980-0812仙台市青葉区片平2-1-1

             (東北大学教職員組合書記局内)

 

 

 

 

社会脅かす事態「マクド難民」_必要なのは正規化と賃金底上げ

          日本自治体労働組合総連合中央執行委員 関口裕志さん

         厚労・文科両省は118日、今春卒業予定の大学生の就職

        内定率を発表しました。内定率は75.0%。両省は内定を得て

        いない大学生が約11万人に上ると推計。依然として就職戦線

        は厳しいようです。

         「朝日」(1月13日付)1面の「夜をさまよう『マクド難

        民』」は衝撃的でした。「ネットカフェに泊まれば千円くらい

        かかる。マクドナルドなら百円のコーヒー1杯でずっといら

        れる」と、派遣の職も失った若者たちを取材した記事でした。

         15歳~24歳の若年労働者は完全失業率も高く、2011年

        では8.2%と雇用者全体の4.8%を大きく上回っていま

        す。非正規雇用比率も47%と雇用者全体の35%を上回ってい

        ます。「社会人としての第一歩が、失業者、不安定な非正規雇

        用」という社会でいいはずがありません。

         これは、なにも個々の青年だけの問題ではなく、日本社会

        の現在と未来を脅かす重大な事態です。いま、重要なことは、

        就職難の打開と若年労働者のなかで進行している「貧困」の

        増大に歯止めをかけ、非正規の正規化、雇用の安定、賃金の

        底上げなどを実現することです。

 

 

 

 


 

 

 

 

カタカナに踊らされていいのか

            日本ジャーナリスト会議事務局次長 丸山重威さん

         実際はそんなに真新しいものではないのに、もっともらし

        くカタカナで命名し、素晴らしい政策であるかのように印象

        づける。総選挙前、11月から新聞に登場した「アベノミクス」

        という言葉は、そんな意図で始まったのではないだろうか。

        安倍内閣で官邸入りした世耕弘成内閣官房副長官と飯島勲内

        閣参与という「メディア戦略コンビ」のキャッチだった可能

        性もある。

         2%目標の物価上昇、円高是正、大幅な金融緩和、という

        経済政策は、景気回復の保証はないのだが、円安の進行、株

        価の上昇などの数字が見え始めると、あたかも大成功のよう

        に見える。内閣支持率63%、「経済政策に期待」69%(毎日新

        聞調査)などといわれるとなおさら。メディアもアベノミク

        スに踊らされている。

         しかしどうか。問題は、この円安、株高、物価上昇政策で、

        景気が回復し、失業率が改善し、国民生活もよくなることだ

        が、既に価格破壊で輸入品頼みの庶民からいえば、とても手

        放しでは喜べない。既に、ガソリン価格などが上がり、輸入

        品を頼りにした衣料品の扱い店や100円均一の店の経営が

        苦しくなっているという。あまり報じられていないが、「日本

        は円安誘導を煽っている」といった見方もある。

         いまの日本経済の基本的な問題は、何といっても、国内の

        消費の落ち込み。それもそのはず、労働者の平均年収は20

        01年の454万円をピークに下落。11年には409万円余。

        2%の物価上昇は最初に庶民生活に響く。美名にごまかされ

        るわけにはいかないのだ。

 

 


 

TPP交渉参加は公約違反_繰り返すなごまかしの説明政治_第156回配信  2013年2月25日

         TPP(環太平洋連携協定)への交渉参加に安倍首相が踏

        み出そうとしています。

         TPPは「聖域なき関税撤廃」が原則であることは明白。

        それを「あらかじめ約束することを求められるものではない」

        と日米共同声明で確認したから、例外や「聖域」が認められ

        た「かのように」言い、マスコミも報じる。何のことはない、

        ウソとごまかしの始まりではないでしょうか。

         沖縄返還交渉での「核密約」をはじめ、国民にまともに説

        明できない交渉の内容をごまかしてきた例は多い。今回のT

        PPをめぐる日米首脳会談への安倍首相の報告も、その解釈

        を援護するマスコミの編集方針もともに異常です。その異常

        さは、国民の利益と国の主権や民主主義を守る責任を投げ出

        した質の悪いものです。

         戦後の「自民党政治」は、とくにアメリカとの関係でこう

        したウソとごまかしの説明をし、国民をだまし続けて政権を

        維持してきました。現在の日本国民のさまざまな苦しみの根

        っこにはこうした政治方針があり、だまされ続けてそれを支

        え続けてきた国民がいました。「もう同じ過ちは繰り返さない」

        と、手を結んで呼びかける努力をする時です。

 

 


 

リストラに抗する健在な労働組合

         「新かながわ」編集長 瀬谷昇司さん

         ソニーに、従業員を早期退職に追い込む「追い出し部屋」

        があった。世界のソニー、技術のソニーといわれ、アップル

        社のCEOだった故スティーブ・ジョブズも見学し、模範に

        した厚木事業所にも、労働者いじめのセクションがあったと

        いうのは衝撃的なできごとだった。メイド・イン・ジャパン

        の衰退が言われて久しいが、リストラ人減らしと聞いて「ソ

        ニーよ、お前もか」という気持ちだ。

         ソニーといえば、就職ランキング上位の常連で、1998

        年から2002年まで、文系も理系もトップだった。今は50

        代だが、厚木工場の技術者で20年ほど前に退職した大学時代

        の後輩に聞いてみたら「電機他社と比べて相対的にしめつけ

        のゆるい職場でした」という。

         そんな彼に、「ソニー労組厚木支部がまだ健在ですよ」と話

        したら、「本当ですか」と声を弾ませた。所属組織は違ってい

        たというが、たたかう労働組合が今なおあるのは心の底から

        嬉しかったのだろう。

         今回の取材は社員個人の訴えだが、ソニー労組厚木支部は、

        この問題を正面から取り上げている。「退職強要をはね返せ!

        相談窓口『リストラ110番』なども開設。「繰り返される人

        減らし・リストラでは、人心が離れる!」「リストラはしない

        !トップと従業員が団結してこの難局を乗り越えよう」と訴

        えている。

  この原稿は、「新かながわ」2208号から、編集部の了解を得て配信して

 います。

  この「追い出し部屋」の記事本体は、この号の1面トップに掲載されています。

連絡先231―0037横浜市中区富士見町1-2 今一ビル202

  TEL 045(334)7867 FAX 045(334)7868

  HPshinkana.jp

    「新かながわ」は週刊(月4回刊)日曜日発行。1カ月400円〒160

 

 

 

 

医療費負担を無料にしたい

        川崎医療生活協同組合多摩川支部 支部長 一之谷睦子さん

         「いのちの章典」を運営委員会で学習し、あらためて医療

        生協の存在意義を確認したいと思います。そして支部でも学

        習したいと思います。

         健診内容が低下しているので「ぜひ以前の内容にしてくだ

        さい」と市に要求していきたいです。充実した内容を自費で

        受けると、費用の負担があまりにも大きいのです。

         政府は70歳以上の医療費一割負担を2割にする案を考えて

        いるようですが(一部の高額所得者を除いて)、無料にしてほ

        しい。

         全国協同組織活動交流集会の報告で、無料にしたら市町村

        当局の医療費支出が減少した報告を聞きました。きびしい財

        政では無理と言われますが、そうではないと知ることができ

        ました。もちろん保健師の活動など関係者の努力もあると思

        いますが。

  この原稿は、川崎医療生活協同組合の機関紙「川崎医療生協」第557号か

ら、編集部の了解を得て配信しています。

  「いのちの章典」とは、「医療福祉生協のいのちの章典」のことです。

1991年に日本生協連医療部会の総会は「医療生協の『患者の権利章典』」を確定しました。この章典を基にした運動は、日本の医療の流れを人権を尊重する方向に変える役割を果たして来ました。

この運動が発展して、2010年に日本医療福祉生活協同組合(医療福祉生協連)が発足。その設立の趣意書を基本にして、医療福祉生協の「いのちの章典」を策定しています。(現在は2次案)

 「いのちの章典は、憲法をもとに人権が尊重される社会と社会保障の充実

をめざす私たちの権利と責任を明らかにしたものです」としています。

  全文検索は右記へ http://www.hew.coop/shouten/shouten_zenbun 

連絡先〒210-0804川崎市川崎区藤崎4-21-2

  TEL044(266)7532

 

 


 

実効ある法改正へ運動の強化を

          神奈川労連労働相談センター 相談員 齋藤廣司さん

         昨年の通常国会で、労働者派遣法、労働契約法、高齢者雇

        用安定法の3労働法が「改正」されました。

         また、今年はパートタイム労働法が「改正」予定です。

         いずれにしても、労働者の働き方、働かされ方に重要な影

        響を与える内容です。しっかり学習して活用することが必要

        です。

         大手通信企業の研究所で7年間、派遣社員(専門26業務)

        として働いていた女性労働者から相談がありました。1年更

        新が続いていたのが、今年の3月で突然に更新が打ち切りに

        なるとのこと。

         派遣会社の説明によると通信企業の本社からの一斉通告で、

        複数の派遣会社の事務職や部長付き秘書たちが、ほぼ全員「切

        られる」とのことです。

         以前、日産でも同様に800人の専門26業務で働いていた

        派遣労働者が首を切られ、日産の契約従業員(最長2年11

        月、雇止め付き)として希望者を雇いました。今回の相談の

        裏には、法改正を先取りした企業の戦略が見えてきます。

         労働契約法の改正では、今年の4月以降から、反復更新さ

        れ通算で5年を越えれば労働者の申し込みによって「期間の

        定めのない労働契約」に変更されます。しかし、賃金・労働

        条件については直前(有期)の労働契約と同じでよいとなっ

        ています。そのいっぽう、法第20条では、期間の定めがある

        ことを理由に「不合理な労働条件の禁止」としました。

         これからは業務・職務に関係ない労働条件(通勤手当・食

        堂の利用や安全管理等)は、特段の理由がない限り「無期」

        の労働者と同じにしなければなりません。これらの法改正を

        先取りして、大企業は雇い止め法理の適用を逃れるため、派

        遣労働者の雇止めを行ってきたものと考えられます。

         実効ある改正にするために、有期雇用で働く労働者の無期

        雇用への転換要求や、均等待遇の実現をめざす私たちの取り

        組みが重要となっています。

  この原稿は、神奈川県労働組合総連合の機関紙「神奈川の仲間」第269号

から、編集部の了解を得て配信しています。

連絡先〒231-0062横浜市中区桜木町3-9 横浜平和と労働会館内

 TEL045(212)5855 FAX045(212)5745

 

 

 

 

首相の「感触」で国の主権を判断できるのか 第155回配信  2013年2月18日

         農政連(農業者政治連盟)という組織がある。地域の農協

        の「農政対策委員会」の呼びかけで、農政活動資金拠出運動

        が毎年おこなわれる。拠出金の基準は農家1戸あたり500

        円。その呼びかけにTPPに反対する活動も含まれています。

         今週の22日に予定されている日米首脳会談で、TPP(環

        太平洋戦略的経済連携協定)への参加問題が急浮上。安倍首

        相は、自民党の選挙公約である「聖域なき関税撤廃を前提に

        する限り、交渉参加に反対する」としながらも、聖域を確保

        できるかの「感触」を探った上で判断するとしています。

         国の主権を脅かすようなTPPの本質(関税ゼロ原則・交

        渉内容非公開・投資家と国家間の紛争解決条項)などを再認

        識すべきです。首相が、聖域を確保できる「感触」を得た、

        というレベルで、国の主権を処理されてはたまりません。

         日米安保条約に関わる交渉で、今日ではさまざまな「密約」

        の存在が明らかになっています。民主主義の社会では、こう

        した密約の存在は許されません。この国が、再び同じような

        過ちを繰り返さないためにも、情報公開とごまかしのない説

        明がされるべきです。過去の政権のごまかしの説明の実績に

        立って、反対の声を説得できると判断させてはいけません。

         資金拠出した農家の思いも生かさなくてはいけません。

 

 

 


 

これでは餓死してしまう 生活保護の切り下げ許すな 第155回配信 2013年2月18日

生活保護の切り下げ許すな

              神奈川県労働組合総連合「神奈川の仲間」から

         安倍政権は生活保護を今年の8月から段階的に引き下げる

        としています。

         生活保護基準額を6.5%、670億円、期末一時扶助も

        70億円削減し、2015年度までの3年間で740億円の削

        減をしようとしています。生活保護受給の96%の世帯が削減

        となり、とくに都市部の子育て世代が大打撃を被ります。

         今回の引き下げの根拠とされているのが、厚労省の生活保

        護基準部会が生活保護を受けていない低所得世帯と、生活保

        護世帯とを比較した検証結果です。一部の生活保護世帯が第

        1十分位(世帯数が等しくなるよう十等分した、所得の一番

        低い階層/平均年収120万円程度)よりも消費水準が高い

        とされたことによります。

         しかし、基準部会では、留意事項として「貧困の世代連鎖

        を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮す

        る必要がある」と述べており、「慎重に配慮すべき」と求めて

        います。安倍政権による恣意的な引き下げです。

最大の問題は受けるべき人が受けられないこと

         そもそも、本来は生活保護で救済されるべき層が最下層に

        転落しており、第1十分位が生活保護世帯より低いのは当然

        です。これでは、生活保護費を下げる理由にならないばかり

        か、さらに貧困が拡大することは必至です。

         「受けられるべき人が受けられない」ことが、最大の問題

        なのです。

命を脅かす強権的な生活保護行政が生まれる

         改悪は引き下げだけではありません。生活困窮者支援特別

        部会の報告書は、さらなる制度の改悪を求めています。

         扶養義務者に扶養が困難な理由の説明義務を課し、一般就

        労が可能と判断された場合は低賃金であっても「就労」を基 

        本とするとしています。

         現行では、資産および収入状況に限定されている福祉事務

        所の生活保護受給者への調査・指導権限を、支出状況、就労

        状況などまで把握するよう強化するとしています。

         ただでさえ、申請そのものを受け付けない水際作戦は続い

        ており、このような改悪がおこなわれれば命が脅かされる事

        態を引き起こします。

生活保護基準は国民生活全般に影響を与えるもの

         生活保護基準は多くの制度や施策に連動し、国民生活全般

        に影響を与えます。最低賃金も生活保護と整合性をもつとさ

        れ、労働者の賃金水準に影響します。

         生活保護バッシングが一定の共感を得る背景には、国民の

        厳しい生活実態があります。貧困の拡大がこうした感情論を

        生みだし、国民の分断に利用されます。生活保護は憲法25

        を体現した制度であり。必要な人は受給できる制度にするこ

        とが必要です。

         働けばまともな生活ができる賃金にすること、最低賃金の

        引き上げや全国一律最低賃金制度の確立が必要です。

 

   この原稿は、神奈川県労働組合総連合の機関紙「神奈川の仲間」から、編集部の了解を得て配信しています。

 

 

 


 

南相馬は四重苦の地 第155回配信 2013年2月18日

原発事故は取り返しつかぬ被害

               川崎医療生活協同組合 理事 矢後省三さん

         昨年の11月7日から8日、「高津9条の会」主催の「被災

        地南相馬訪問ツアー」に参加しました。このツアーは、震災

        後川崎市高津区に避難されている福島県の「原町9条の会」

        の山崎さんの案内で行われました。

         福島第1原発から20㎞圏内の小高区では、人っ子一人見か

        けません。地震で壊された家は放置されたまま。海岸の近く

        では津波で流された車がひっくり返ったまま放置され、常磐

        線小高駅では通学のための自転車が駐輪場に置き去りで、3

        月11日で時が止まったままです。

         仮設住宅に避難している方は、狭くて隣の声も筒抜けのう

        え、暑さも寒さも並大抵ではありません。除汚をして元に戻

        してほしいと思うけれど困難です。「どこかに住める所を作っ

        て欲しい」と話します。

         酪農を営んでいた方は、避難先の岳温泉から90㎞離れた

        牛舎に3カ月にわたって通いましたが、「最後は殺処分せざ

        るを得なかった」など、涙ながらに訴えていました。

         南相馬は地震、津波、原発事故、風評被害の四重苦です。

        とりわけ原発事故は、取り返しのつかない被害をもたらして

        います。原発は即時廃炉にしなければとの思いを強くしまし

        た。

 

  この原稿は、川崎医療生活協同組合の機関紙「川崎医療生協」第557号

から、編集部と筆者の了解を得て配信しています。

 

 

 

 

公務員いじめの賃金引き下げに異議あり 第154回配信  2013年2月11日

         「公務員いじめ」が度を越しています。国家公務員の賃金

        引き下げ(平均7.8%)に続いて、国は、地方公務員の賃

        金を同様に引き下げるよう「要請」している。しかも、地方

        交付税の削減や公共事業の積み増し指導などとセットで強要

        されています。

         本来ならば公務員であっても賃金や労働時間などの労働条

        件は、「労働者と使用者が対等の立場で」話し合って決めるも

        のです。しかし、公務員の場合は、団体交渉権と争議権を法

        律で制約していることへの代償として、人事院や地方の人事

        委員会を設けてそれぞれの労働条件を勧告させています。

         今回の国の賃金引き下げはこうした制度を無視しています。

        たとえ「復興予算」を口実にしても、許されるものではあり

        ません。地方交付税の削減や公共事業の積みましと合わせて、

        地方の自主性を否定することは地方自治の否定に繋がります。

         国や地方を問わず、ほとんどの公務員は「公務員魂」をも

        ち、国民のために行政の実務を担って働き、暮らしています。

       その仕事への責任感と誇りに応えるためにも、まともな賃金

        と労働条件を国民の責任として保障する必要があります。

         憲法違反といえる政党助成金を廃止するなど、財政上の努

        力の道はまだまだあるはずです。

 

 


 

削減前の「駆け込み」退職 公務員モラルからの「縁切り」か 第155回配信 2013年2月18日

 疑問無視して「駆け込み」で成立

         神奈川県職員労働組合総連合機関紙のコラムから

         年明け早々、あわただしい一年を予感させられる出来事が

        マスメディアを賑わした。

         条例改正による退職手当削減を前に、年度途中で退職する

        地方公務員が各地で広がっているとの報道である。多くの記

        事がこの動きを「駆け込み」と表現し、批判的な論調を端的

        に伝えていた。

         ところで、今回の出来事の発端となった人事院調査による

        約400万円の官民格差。額の大きさをみれば、調査手法に

        ついてていねいな分析、議論が必要なはずである。しかし、

        国の有識者会議で額の妥当性に疑問が出されたものの、結果

        を急ぐ観点から「駆け込み」でまとめられ、閣議決定されて

        しまったのがいきさつである。削減法案は国会解散を控える

        1116日に「駆け込み」で審議入り、たった1日で成立し

        てしまった次第である。

         この削減額を、国とは職員構成など事情が異なる地方に当

        てはめると、減額率が違ってくるなど、新たな問題も生まれ

        てしまう。理不尽の波及が止まらぬ事態なのである。

         今回の「駆け込み」騒ぎは単なる損得勘定ではなく、悲し

        いかな、公務員のモラルからの「縁切り」の意を読みとるべ

        きではなかろうか。国民の感情、県民の理解を盾に理をない

        がしろにし、追いつめるばかりでは、誰にとっても良い結果

        にはつながらない。これからどんな「駆け込み」が続くのだ

        ろうか。

   この原稿は、神奈川県職員労働組合総連合の機関紙「神奈川県職労連」第

1719号(2月1日づけ)のコラム「県政散歩」から、編集部の了解を

得て配信しています。

 

 


 

奏者の目線(Ⅳ) オーケストラの中身とは 第155回配信 2013年2月18日

           神奈川県公務公共一般労働組合 神奈川フィル分会

                  コントラバス奏者 杉本 正さん

         「神奈川フィルハーモニー管弦楽団が演奏する」というこ

        とばの定義とは何かと問われれば、当然神奈川フィルの楽員

        が演奏することを指すと考えられます。

         それでは、演奏している音楽家のうち何人が神奈川フィル

        の団員だったら、神奈川フィルの演奏になるのかと問われる

        と、これはなかなか難しい問題です。

オーケストラは常に「エキストラ」と呼ばれる臨時雇いの

        団員が含まれているからです。楽員が何らかの理由で休んで

        いる場合や、マーラーやブルックナーの交響曲のように大編

        成が指定されている場合は、団員だけでは足りないので、エ

        キストラを雇うことになります。

         しかし、これには許される範囲があります。度を超したエ

        キストラの運用は、オーケストラの信用問題になるので、ど

        このオーケストラでも、しっかりと自制しています。

         かつて神奈川フィルでは、演奏の依頼が重なった時、日程

        を調整しないで、オーケストラを2つに分けて、エキストラ

        で水増しして、2カ所で演奏していた時期がありました。と

        うぜん、いつも一緒に演奏していないエキストラばかりだと、

        演奏の質も落ちるし、何よりもこれでは神奈川フィルの音な

        ど出るわけがありません。

         案の定、依頼主からクレームが来ました。しかも神奈川フ

        ィルを良く知り、神奈川フィルだからこそと演奏を依頼した

        人からです。「いつもの神奈川フィルと音が違うと思ったら、

        顔なじみの楽員がほとんどいない。神奈川フィルに演奏を依

        頼したのにどういうことだ」。

         これは同時に神奈川フィルだからこそ聴きに来た人を二重

        に裏切る行為だったのです。以来、2カ所で同時に公演する

        ことはなくなりました。

         しかし、このいきさつを知らない経営者になってから、神

        奈川フィルのエキストラ水増しによる2カ所同時公演が復活

        してきました。理事などは自分たちが神奈川フィルというラ

        ベルを貼って演奏させれば、中身は何でも良いと思っている

        ようです。

         律儀なことに、あの広いディズニーランドにミッキーマウ

        スは「一匹」しかいないそうです。エキストラだらけの神奈

        川フィルが同時にいくつも存在することは、オーケストラの

        価値を下げているように思えてなりません。

 

  この原稿は、「新かながわ」第2204号から、編集部の了解を得て配信し

ています。

 

 


 

『本気』の賃上げ闘争をたたかいましょう 第154回配信 2013年2月11日

         「世界一経済の強い国にする」。虚構の多数議席をえて、出

        もどった首相が国会で絶叫しています。「アベノミクス」、的

        はずれの三本の矢。すでにへし折れた矢を三本並べただけ。

        まさに的をえた正論の声がきこえます。

         経済とは「経世済民」。世を治め、民の苦しみを救うこと(岩

        波国語辞典)。株高で国内外の機関投資企業がもうけ、円高で

        輸出大企業がうるおい、大規模開発や原発再稼働・増設で大

        企業に税金がまわり、そして消費税大増税・軍事費増額・生

        活保護費削減、TPP参加・オスプレイ配備・・・。これで

        は、旧来の自民党政治で、まともな経済と真逆の「大企業と

        軍事栄て民亡ぶ」道です。

         時は春闘。さすがのマスコミも、『賃金と雇用が大事だ』の

        論調。物価の2%アップ、消費税率2倍、賃下げ、雇用破壊、

        生活保護削減。これでは誰が見ても景気は良くならないと・・・。

        しかし、日本経団連は賃金抑圧の一辺倒。

         なによりも労働者と庶民が貧困の淵から脱して、まともな

        生活と雇用を実現する政治経済を切り開く、『本気』の階級闘

        争が求められています。

         まずは、すべての仲間の声を集め、2月中に賃上げ要求を

        断固として出す。3月3日には県民と共同した大集会・デモ。

        徹底した職場激励、回答確約行動、統一行動・ストライキで

        要求貫徹の団結を強める。要求・回答アンケート、妥結投票、

        仲間の声に依拠した賃上げの職場世論づくり、「大企業の内部

        留保を賃上げにまわせ」の社会的世論づくり。『本気』の賃上

        げ闘争をたたかい抜きましょう。

 

 


 

奏者の目線(Ⅲ) 「オーケストラは熟成の味」 第154回配信 2013年2月11日

         オーケストラの演奏は、よく料理に例えられます。

         ただ正確に間違わずに演奏するのが、良いオーケストラで

        はなく、いちばん重要なのは「味」です。オーケストラは「上

        手い」より「美味しい」というほうが大事なのかも知れませ

        ん。

         しかしオーケストラの「味」というのは一朝一夕にはでき

        ません。同じメンバーで演奏を重ねながら長い年月をかけて

        作り上げてこそ、簡単にまねのできない独特の味になります。

         さらにオーケストラの音は、シェフとも言うべき歴代の指

        揮者たちによって、さまざまな味付けをされ熟成されます。

        だから歴史のあるオーケストラほど、個性的で味わい深い音

        になるのです。

         神奈川フィルの音も43年間かけて、出来上がってきました。

        神奈川フィルにしか出せない音、神奈川フィルならではの演

        奏、それがオーケストラのいちばんの魅力なのです。

                  30年前に、私が入団したころの神奈川フィルは、平均年齢

        も三十代前半とたいへん若く、演奏もとても若々しく勢いの

        あるものでした。どちらかというと古典よりもロマン派から

        近代の曲で魅力を発揮するようなオーケストラでした。

         その後、歴代のシェフによってさまざまな味が加わってき

        ました。宗教音楽を得意とするシェフ、オペラや声楽に造詣

        の深いシェフ、近現代作品の初演を数多く手がけてきたシェ

        フ、本場ドイツの重厚な音楽を伝えてくれたシェフ。それぞ

        れの指揮者たちが楽団員にたくさんの新鮮な経験をさせてく

        れたことで、神奈川フィルに新たな魅力が次々と加わってき

        ました。

         こうして熟成されてきた神奈川フィルの音を、若い楽員に

        伝えることがベテラン楽員の仕事であり、熟成された音を大

        切にしながら、そこに新たな魅力を加えることが、今の指揮

        者の仕事です。

         「自分が来る前の神奈川フィルは良くなかった」などと新

        聞に書くような今の指揮者には、山田和雄、外山雄三、ハン

        ス・マルティン・シュナイトという歴代の音楽監督に対する

        敬意が感じられない。まして定期演奏会に正楽員を排して自

        分の気に入ったエキストラを入れたり、ベテラン楽員の解雇

        を促したりする指揮者に、歴史ある神奈川フィルを料理させ

        るのは、本当にもったいないことです。

 

 


 

「医療等ID」は医療市場化、漏えい・犯罪の温床に 第154回配信 2013年2月11日

        神奈川県保険医協会・「神奈川県保険医新聞」の「主張」から

         昨年末の衆院解散により共通番号制法案(マイナンバー法

        案)は一旦廃案になったが、その一方で医療分野独自の「番

        号制度」による医療等情報の利活用に向けた議論が粛々と進

        められている。

         厚労省は昨年9月28日に「医療分野における情報の利活用

        と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」を公表。

        これは、共通番号制の対象外とされた医療等情報の取り扱い

        について、独自の法整備に向けた議論の中間報告として出さ

        れたものだ。

         しかし、本報告書は医療等情報の利活用の推進を主目的と

        しており、抽象的で分かり難い美辞麗句を並べたて、国民に

        幻想を抱かせている。また「日本再生戦略」等の成長戦略と

        の関係にも言及。50兆円規模の医療市場化、公的医療の給付

        抑制に向けて医療等情報の利活用を目論む政府・財界の企図

        が透見される。

         医療等情報の連携の仕組みについては、医療等分野の独自

        の番号(医療等ID)と情報連携基盤(医療等情報中継デー

        タベース)からなる情報連携システムの構築を既定路線に据

        えている。この「医療等ID」とは目視可能な番号を国民1

        人に1つ付番することを想定。導入されれば、いま以上のプ

        ライバシー侵害や「なりすまし」等の犯罪を生みだすことは

        火を見るよりも明らかだ。

         肝心の患者の個人情報保護対策については、あくまで情報

        連携・利活用を前提とした保護であり、その内容もおざなり

        だ。本来なら、患者の情報保護の観点から医療分野の個人情

        報保護法として検討されるべきである。

         開業医への影響も甚大だ。「医療等ID」等による情報連携

        システムが構築されれば、開業医は必ずその仕組みに組み込

        まれる。設備の費用だけでなく、高度な情報漏えい対策、漏

        えい等に備えた補償準備など、過重な負担の強要につながる

        恐れがある。「オンライン義務化問題」の再燃が懸念される。

         公的医療の給付抑制、医療市場化、プライバシー侵害、医

        療機関への負担強要など、多くの問題をはらむ「医療等ID」、

        「医療等データベース」に対し、医療界から警告を鳴らす必

        要がある。

 

 


 

「健全な経済」もとめ健康な労働運動を 第153回配信   2013年2月4日

         組織率が低下している労働組合だが、影響力はまだまだあ

        ります。その誕生いらい、数々の苦労を重ねながら要求実現

        への希望を求めてきました。その教訓を今日の情勢に適用し

        ながら、新しい展望の開き方を追求してほしいものです。

         経団連は自分たちのことしか考えないような主張をし、賃

        金の引き上げを拒否しています。しかし、現在の経済の実態

        をみれば、働く人たちの賃金の底上げをしないで経済の展望

        は開けません。

         「アベノミクス」などということばがマスコミでもてはや

        されていますが、円安で輸出は伸びても輸入コストは高まり

        ます。コスト削減の圧力が人件費の削減に向かったら、消費

        は冷え込みます。GDPの6割といわれる家計消費が冷え込

        んだら、日本の経済はますます悪くなります。

         大企業を中心に蓄積されている内部留保を活かして、賃金

        の底上げ、非正規労働者の正規化、最低賃金の大幅な引き上

        げなどに取り組むことが切実な課題になっているといえます。

         生活保護費や年金の切り下げ、公務員の賃金や退職金の引

        き下げを強行する政策に至っては、「経済の健全化」に対する

        正反対の政策です。国民生活を豊かにする健全な経済を求めて、「健康な労働組合運動」をめざしましょう。

 

 


 

雇用継続のたたかいを職場から 第153回配信 2013年2月4日  No.474

        神奈川労連労働相談センター 相談員 原 達郎さん

         昨年、ある年配の女性から「夫が来年3月末で60歳定年を

        迎えますが、雇用の延長はできるのでしょうか」と相談があ

        りました。

         そこで、「年金支給年齢が段階的に先送りされることにより

        『高年齢者雇用安定法』が制定され、原則65歳まで『定年延

        長』か『雇用継続』か『定年制廃止』か、いずれかの措置を

        使用者に義務付けました」と説明。就業規則はどうなってい

        るのか確認するようアドバイスしました。

         さらに昨年8月、年金支給が今年の4月から61歳になるこ

        とから労働者に不利にならぬようこの法律が改正(今年4月

        施行)され、関連グループ企業への雇用措置や企業有利の緩

        和措置の撤廃などが盛り込まれたことも説明しました。

         女性は、「それを聞いて安心しました。さっそく主人と話し

        合い会社の意向も聞いてみます」とのことでした。

         1129日、「定年後の継続雇用の恣意的拒否は違法である」

        との最高裁の画期的な初判断が出されました。

         JMIU(全日本金属情報機器労組)の役員が、津田電気

        計器を相手に全組合員3人だけが継続雇用を拒否された件で

        の地位確認などを求めた訴訟で、大阪地裁・高裁で勝訴。今

        回、最高裁第一小法廷は解雇権乱用法理を類推適用し、雇用

        関係の存続を認め、会社に雇用の存続と賃金の支払いを命じ

        ました。

         判決は「継続雇用の基準を満たす労働者は定年後も雇用継

        続を期待する合理的理由が在り、雇用関係が存続している」

        としました。

         会社側はいろいろな口実を並べ、組合員排除など恣意的な

        運用をしてきます。

         労働組合など、現場からのたたかいが重要となるでしょう。

  この原稿は、神奈川県労働組合総連合の機関紙「神奈川の仲間」第268号

 から、編集部の了解を得て配信しています。

 

 


 

原子力艦船の事故 国の責任の所在明確にすべき 原子力艦船の所管を原子力規制委に 第153回配信 2013年2月4日  No.475 

        原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会

「阻止連ニュース」から

         今年の4月から、横須賀市逸見町にある「横須賀原子力艦

        モニタリングセンター」は、文部科学省から原子力規制委員

        会へと業務移管される。同モニタリングセンターの正式名は

        「原子力規制委員会原子力規制庁横須賀原子力艦モニタリン

        グセンター」となる。

         移管後、原子力規制委員会では、文部科学省と同様にわが

        国に原子力艦が帰港する際に、原子力艦寄港地周辺住民など

        の安全・安心の確保のために、原子力艦寄港地周辺の放射能

        調査を行うという。

         現在、原子力規制委員会は米原子力艦船が神奈川県横須賀

        港、長崎県佐世保港、沖縄県金武中城港に寄港する際に、関

        係機関と協力して編成される「原子力艦放射能調査班」の班

        長として寄港地に赴き、原子力規制庁が指定する業務を担う

        「技術参与」(非常勤職員)を公募している。

米原子力艦船の規制、事故への対応は大きな問題に浮上

         福島第1原発事故という未曽有の原子力災害のもとで、原

        子力発電所に対する規制や防災指針が検討されている。一方、

        原子力艦船についての規制と事故への対策は「おざなり」に

        されている。

(1)そもそも原子力艦船の事故に対して、国のどこの機関

が国民の生命の安全のために責任を負うのかという点が不明。

日本政府は明確に示すべきだ。

(2)2004年、内閣府によって「原子力艦の災害対策マ

ニュアル」が策定されたが、福島第1原発事故の教訓を踏まえるならば抜本的な改訂が早急に必要だ。

 改訂に向けて内閣府はどうするのか、米艦船が寄港する自治体や市民に明らかにすべきだ。

(3)原子力規制委員会設置の目的は「国民の生命、健康及

び財産の保護、環境の保全・・・に資することを目的とする」

        (設置法第1条)だ。原子力艦船も位置づけ、対策を講じて

        いく責任があるはずだ。

 

  この原稿は、「阻止連ニュース」No.1406(1月29日づけ)から、

編集者の了解を得て配信しています。

 

 


 

「歴史」は安倍政権のアキレス腱 第153回配信 2013年2月4日  No.476

                     ジャーナリスト 丸山重威さん

         「安倍首相は、朝鮮や他の地域の女性を性奴隷として使っ

        たことを含む第二次大戦中の日本の加害に対する謝罪を書き

        なおそうとする動きを見せている」―1月3日付ニューヨー

        クタイムズの社説。「安倍氏の恥ずべき衝動は、北朝鮮の核兵

        器プログラムなど地域の重大な協力を脅かすかもしれない」

         一方、「安倍晋三首相が指名した恐ろしいほど右傾的な内閣

        かこの地域にとって悪い兆し」と書くのは、英紙エコノミス

        トの1月5日号。閣僚について、「13人は『伝統的価値観』へ

        の回帰を提唱、戦時中の行為について日本の『謝罪外交』を

        批判する国家主義的シンクタンク『日本会議』を支持。さら

        に9人は歴史教育で軍国主義時代を賛美するよう求める議員

        連盟に所属している。これらの閣僚は、第二次大戦当時の日

        本の残虐行為の大半を否定する」と批判した。

         できるだけ世論を刺激するようなことは避け、景気回復を

        して参院選の勝利を目指す、というのが安倍自民党政権の基

        本戦略だそうだ。かといって「私の政権で改憲を」と言った

        かつての夢を諦めてはいない。一歩一歩、着実に進める。例

        えば集団的自衛権、例えば教育改革、例えば生活保護切り下

        げ・・・。それぞれ有識者会議を作って世論形成も考える。

         だが「歴史」は安倍政権のアキレス腱。アジア侵略の反省

        から生まれ、平和国家建設を世界に約束した日本国憲法を捨

        てる主張にも、世界の目は当然厳しい。もう一度、日本近代

        史を読みなおし、自民党が狙う憲法とは何なのか考えたい。

        歴史の否定は憲法の否定でもある。

 

  この原稿は日本ジャーナリスト会議の機関紙「ジャーナリスト」第658号

(1月25日付け)のコラム「視角」から、筆者と編集部の了解を得て配信

しています。丸山重威さんは、機関紙協会神奈川県本部の顧問でもあります。

 

 


 

奏者の目線(Ⅱ)全楽員で決めるオーディション 第153回配信 2013年2月4日  No.477

         神奈川県公務公共一般労働組合神奈川フィル分会

                  コントラバス奏者 杉本 正さん

         私は音楽大学を卒業した年、オーディションに合格して神

        奈川フィルに入団しました。

         オーケストラの楽員の全員を前にして演奏したオーディシ

        ョンの時の緊張感は、29年経った今でも忘れられません。

         オーケストラのオーディションは、各楽団によって多少の

        違いはありますが、基本は全楽員で演奏を聴き、その投票結

        果によって決まります。指揮者や音楽監督も、楽員と平等の

        一票しか持っていません。

         神奈川フィルでは第一次審査で課題曲となっている協奏曲

        の演奏を全楽員で聴き、基本的なテクニックや音楽性を審査

        します。そこで一回目の投票があって、過半数を獲得した者

        が二次審査へと進みます。

         二次審査ではオーケストラのパート譜を一人で演奏します。

        ここではオーケストラの曲の楽譜を、いかに正確に読み取り、

        確実に演奏できるかが審査されます。

         技術以外にも音楽性も考慮され、その奏者の演奏スタイル

        が神奈川フィルに向いているかどうかが判断されます。

         二次審査の投票で最高点を獲得した者が採用候補者となり、

        半年間の試用期間で楽員と同じ条件で演奏をして、将来にわ

        たってみんなと一緒に演奏できるかという人物評価も加味さ

        れ、半年後の全楽員の投票で過半数を獲得して初めて団員と

        して採用となります。

         オーケストラの団員の採用は、オーケストラの団員によっ

        て審査されるのです。

         同様に有期契約の指揮者やコンサートマスター、主席奏者

        などの人選も楽員が行います。

当然ながら、経営者が一方的に楽員を採用したり、解雇す

        るなどということは考えられません。

         オーケストラは音楽家の集団ですから、これが世界中のオ

        ーケストラの常識なのです。しかし、今の神奈川フィル理事

        は、「なぜ平社員に人事権があるんだ。職員の採用は経営者の

        専権事項だ」などと言い、指揮者やコンサートマスター、主

        席奏者などを楽員の了承なく勝手に契約するようになりまし

        た。29年間勤めた楽員の解雇も、理事者側の審議のみで決定

        するという、世界でも他に例を見ない常識はずれな運営が行

        われています。

 

   この原稿は、「新かながわ」第2202号(2013年新年号)から、編集部の了解を得て配信しています。

 

 


 

「強い経済」には内部留保を活用して賃金引き上げを_第152回配信  2013年1月28日

         安倍首相は、通常国会の所信表明演説で「強い経済」をめ

        ざすと強調しました。安倍さん流の抽象的な表現ですが、言

        おうとしていることは読みとれます。

         自民党の総裁に復帰して以来、マスコミは安倍さんの発言

        を積極的に報道しました。その報道から、安倍さんの主張を

        みていくと、かつて失敗した新自由主義路線を復活させるよ

        うに受け取れる。これでは一部の企業は強くなれるでしょう

        が、日本経済は決して良くはならないでしょう。

         今は貿易赤字が大きくなって、国内総生産(GDP)は内

        需とほぼ同じになっているといいます。その内需の6割は、

        国民の家計消費です。家計消費が大きくならない限り、日本

        の経済は立ち直りません。もちろん、輸出を無視して良いと

        言う訳ではありませんが。

         正規社員を減らして非正規社員に置き換え、賃上げを押さ

        え、大規模なリストラを強行して、大企業は莫大な内部留保

        を蓄えてきました。「強い経済」をめざすというのなら、この

        内部留保を活用して雇用を拡大し、賃金の引き上げをすべき

        です。落ち込み続けている労働者の賃金を引き上げることで、

        内需だけでなく国の税収も社会保険財政も改善します。

         時は春闘。賃金引き上げの風を吹かせましょう。

 

 

 


 

米軍兵士の逮捕1日2件 やりきれない市民の怒り_第152回配信 2013年1月28日 No.470 頻発する横須賀基地の米兵犯罪

 日米政府と横須賀市は、原子力空母の母港化を撤回すべき

      原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会「阻止連ニュース」 

         1週間あまりで3件、1月21日には2件と頻発する横須賀

        基地の米軍兵士の犯罪に、市民の間には「やりきれない怒り」

        が広がっている。

         市民の多くも、米軍兵士の飲酒・外出規制ではまったく効

        果がないこと、日本政府と横須賀市当局が米軍に対して毅然

        と向き合い米兵犯罪の根絶に向けて努力していないという、

        米軍に甘い姿勢であることを知っている。

         1月21日は、未明に汐入町3丁目で原子力空母ジョージ

        ワシントン(以下GW)の乗組員による住居侵入事件が発生

        した。

         その日の午後2時55分ころには横浜市西区の雑居ビル1階

        通路で、買い物に来ていた警備員の男性が、原子力空母GW

        の乗組員に顔を殴られる傷害事件が発生しました。逮捕され

        た米兵はGWの乗組員2等水兵で、泥酔していた。同水兵が

        通行人の女性にしつこく話しかけていたため、警備員の男性

        が「やめなさいよ」と声をかけたところ、とつぜん殴ってき

        たという。

         近く横須賀市は「再発防止」を米海軍に申し入れるという。

        再発防止では従来と変わらない要請である。今年に入り米兵

        犯罪が頻発している。しかも原子力空母GW乗組員による事

        件が、立て続けに発生したことを重視するならば、日米政府

        に原子力空母の母港の撤回を要求すべきだ。

         原子力空母GWは、今年も1月から5月にかけて「定期修

        理」を実行する。この間、横須賀に停泊し、多数の修理要員

        も横須賀にやってくる。それだけに米兵犯罪がさらに起きる

        ことが十分予想される。凶悪事件が起きてからでは遅い。

 

 


 

      原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会「阻止連ニュース」

         頻発する米海軍兵士の事件を受けて、神奈川県、横浜市、

        横須賀市が1月22日、在日米軍当局に対して、綱紀粛正と再

        発防止を求める要請を行った。

         まず神奈川県は、口頭で「在日米海軍司令部」(横須賀市)

        に対して、再発防止を要請した。

         横浜市は、林文子市長名で在日米海軍司令官ダン・クロイ

        ド少将あてに再発防止を文書で要請した。林市長は、21日に

        横浜市内で発生した米兵の傷害事件に対して、「被害者の方の、

        通行中の女性を守ろうとした勇気ある行動に対してまでも、

        暴力が行われたことに、強い憤りを感じます」というコメン

        トを発表している。

         横須賀市は、吉田市長名で米海軍横須賀基地司令官デビッ

        ト・A・オーウェン大佐あてに文書で要請。市政策推進部長

        が応対した基地司令部民事部長に要請したという。

         県・横浜市・横須賀市も綱紀粛正と再発防止の要請という

        範囲では共通しており、文書提出した横浜市も横須賀市も文

        中には「抗議」ということばはなかった。

         あくまでも「要請」という範囲にとどめたのだろうが、頻

        発する米兵犯罪に対する強い怒りを感じている県民、市民の

        感覚とはほど遠い自治体の姿勢だ。

 

 

 

 

不況でも 大企業はボロもうけ 内部留保を賃金と地域経済に還元すべき 第152回配信 2013年1月28日 No.472

           神奈川県労働組合総連合機関紙「神奈川の仲間」から

         今年の神奈川のビクトリーマップで調査の対象としたのは、

        県内に500人以上の労働者がいる企業で、財務諸表の入手

        可能な115社(昨年比4社増)。

         115社の内部留保(=利益のためこみ)は、831565

        億円で、1年間に1兆3156億円も増やしています。従業員1

        人当たりで38万円(2.1%)増やし、1840万円になっ

        ています。

         個別企業で1年間に1000億円以上増やしたところは、

        東京電力1兆2131億円(372%)、日立製作所3326

        億円(138%)、日本郵政3056億円(3.2%)、日産自

        動車2151億円(5.4%)、ブリジストン1876億円

        (12.4%)、キャノン3271億円(2.9%)、東燃ゼネラ

        ル石油1149億円(428%)の7社です。東京電力は、原

        子力損害賠償引当金を2兆円以上計上したためです。

         合計で82社が内部留保を増やし、32社が減で、増減なし

        が1社でした。企業別の1人当たり内部留保額は、表の通り

        です。

         経常利益については、19企業が1000億円以上の利益を

        上げ、赤字企業は10社、利益ゼロが1社で、残り104社は

        黒字でした。NTTと日本郵政は1兆円以上の利益を上げて

        います。

         この115社の労働者すべてに1万円の賃上げ(一時金は

        夏冬で5カ月とする)をするためには、たった0.92%の内

        部留保を取り崩すだけで可能です。3万円でも2.76%にす

        ぎません。仮に、県内労働者370万人に1万円の賃上げを

        したとすると、県内経済への波及効果・生産誘発額は総額で

        3000億円となります。2万円なら倍になります。

         労働者が生みだした利益のため込み=内部留保を活用し、

        労働者の切実な賃上げと雇用の安定をはかることが求められ

        ています。

 

神奈川の企業の一人当たり内部留保額

業種      企業名         1人当たり内部留額(万円)

石油    東燃ゼネラル石油       17,669 

金融    横浜銀行           12,471

電力    東京電力            8,605

石油    JXホールディングス(旧日石) 7,965

医薬    武田薬品工業          7,838

化学    東京応化工業(応用化学製品)  7,762

電機    ヒロセ電機           7,202

機械    アマダ(金属加工機械)     5,879

建設    日揮(プラント・建設工事)   4,870

ガス    東京ガス            4,846

情報通信  コーエー(ゲームソフト)    4,791

化学    日本ゼオン           4,771

サービス等 野村総合研究所(情報サービス) 4,636

医薬    あすか製薬           4,459

サービス等 日本郵政            4,233

商業    高島屋             3,785

商業    セブン&アイ(ヨーカ堂)    3,612

農林    サカタのタネ          3,547

金属    東洋製罐            3,453

鉄鋼    JFEホールディングス(旧NKK等) 3,423

商業    マクニカ(電子部品等販売)   3,311

運輸    東日本旅客鉄道(JR東日本)   3,295

食品    コカコーラセントラル      3,282

機械    アイダエンジニア(プレス)   3,269

機械    千代田化工建設(プラント)   2,865

医薬    第一三共(医薬品)       2,829

化学    旭化成(石油化学製品)     2,815

輸送機   日産自動車           2,680

金属    東プレ(プレス関連)      2,645

化学    富士フィルム(含ゼロックス)  2,601

  原稿と「表」は「神奈川の仲間」1月1日付けから、編集部の了解を得て配信しています。

 

 


 

奏者の目線(Ⅰ)コンサートホールも楽器です 第152回配信 2013年1月28日 No.473

         神奈川県公務公共一般労働組合神奈川フィル分会

                    コントラバス奏者 杉本 正さん

         私たち器楽演奏者にとって、演奏の腕前だけでなく、よい

        楽器で演奏することも、一人の演奏家として評価されるため

        の大きな要素となります。

         バイオリン属の弦楽器などは、良い楽器はたいへんに高価

        なのですが、それでも年収の何倍もする楽器を持っている団

        員も少なくありません。そうまでして良い楽器で演奏するの

        は、表現能力の高い楽器を持つことによって、演奏がより説

        得力をもって聴衆に伝えられると考えるからです。

         オーケストラ全体を一人の演奏者として見た場合、楽器に

        相当するのがコンサートホールです。

         ヨーロッパではコンサートホールにはオーケストラが常設

        されていることが多く、その本拠地のホールの響きが、その

        オーケストラのサウンドをつくると言っても過言ではありま

        せん。ウイーン・ムジークフェライン・ザールとウイーン・

        フィル、アムステルダム・コンセルトヘボウとロイヤル・コ

        ンセルトヘボウ管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー・ホ

        ールとベルリン・フィルなど、まさに名ホールに名オーケス

        トラありと言えます。

         29年前、私が入団したころの神奈川フィルは、定期演奏会

        以外は小学校の体育館での「音楽鑑賞教室」が主な仕事でし

        た。体育館での演奏は、響きがどうかというような次元では

        なく、救急車やバイク、石焼き芋や古新聞回収車などとの共

        演でしたし、猛暑や厳寒期の演奏は、楽員の健康にも悪い影

        響がありました。

         これでは神奈川フィルのサウンドなどつくり上げることは

        到底できるものではないと、労働組合が交渉し、教育委員会

        の協力を得ながら、長い年月をかけて、小学校の「音楽鑑賞

        教室」を体育館からコンサートホールへの移行を実現させて

        きました。

         オーケストラが体育館で出前演奏することは良いことのよ

        うに思われがちですが、実は安物の楽器で演奏させるような

        ものなのです。近くにホールがない場合は別として、小学生

        にとっても響きのよいホールで行儀よく鑑賞した方が、質の

        良い経験となります。

         それにもかかわらず、最近の神奈川フィルでは、事情にう

        とく、知識の浅い経営者によって、何の問題意識もなく、体

        育館での演奏が復活してきたことがたいへんに気がかりです。